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教育プログラムを通して地域に入る

花園大学文学部 師茂樹 教授

Special Interview

教育プログラムとしての地域連携活動とは?学生とともに地域に入る活動に長く取り組まれてきた花園大学文学部の師茂樹先生に、地域と連携した取組に対するお考えを伺いました。

◆師茂樹氏プロフィール
花園大学文学部 教授
<専門分野>
仏教学、人文情報学、情報歴史学

社会で求められていることを自分で考えられる学生を育てたい ――受け持たれた学生の地域での活動はどのようにして始まったのでしょうか。

花園大学の建学の精神である「禅的仏教精神による人格の陶治」にも合致しますが、学生が主体的に活動する場をつくろうと考えたことから始まりました。
2004年頃から「情報歴史学」というコースの授業で、平安時代の貴族の邸宅のCG作成や京町家の復元3DCG作成などを行い、それらが評価されて東近江市からの受託の安土城3DCG作成や京都府との連携による京都市内の地蔵祠の悉皆調査、南区役所からの受託の羅城門と西寺の復元3DCG作成など、次第に地域に入る活動をするようになりました。
学生も評価されると嬉しくなるので、「次は何だ」となるんですよね。地蔵祠の悉皆調査は、自治体と連携したことで取組が広がり、地蔵盆をされている住民も参加する「お地蔵さまサミット」の開催につながりました。地蔵祠や提灯を作られている方がいて、産業として成り立っていることも分かりました。調査は学生が主体的に行い、中京区では町内で聞き込みながら通りという通りをすべて歩きました。過疎化で子どもがいない地域がある一方、いくつかの町が合同で開催し、参加者数が何百名にもなる地蔵盆を開催するところもあります。
次第に区役所との連携も始まりました。右京区役所には地域のいろんな方が定期的に集まる場がありますが、学生も参加をさせてもらっています。こちらから声をかけたり声をかけてもらったりして、さまざまなつながりができていきます。区のまちづくり支援事業にも応募して、地域活性化のためのアプリの開発や、京北地域で民話調査をして冊子を作ったりしました。どこと連携していいのかわからない状態からの始まりでしたが、「こんなことがあるよ」という声掛けが増え、他の先生にも広がり、地域との関係性が蓄積されてきたように感じます。

課題解決プログラム ――花園大学では地域の課題に向き合う「課題解決プログラム」を正課授業でおかれていますが、このプログラムはいつからあるのでしょうか。

学内では、それぞれの先生の取組を集約し、継続・強化するために、2020年6月に「地域連携教育センター」ができましたが、このプログラムはセンターができる5年程前からあります。地域課題を解決する授業をつくろうという話になり、私が担当することになりました。最初は受講生も少なかったのですが、途中から安定した数の受講生が参加し、区の支援事業でイベントを実施したり、子ども向けの防災イベントの「イザ!カエルキャラバン」に参加したりしました。面白そうだからと途中からとびこみで参加する学生もいます。
いろんな学部学科の学生が各々の学びを活用しながら地域の問題を解決する。そうした課題解決を学ぶ機会を増やそうとこのプログラムを作りましたが、毎回学生の構成がかわるという継続性の課題があります。保育士などを目指す学生が多く受講した年は子ども向けのイベントを実施しました。子どものあやしが上手くイベントは盛り上がりましたが、翌年その学生たちはいなくなるんですよね。ゼミであればまだ継続性がありますが、この授業は広く浅く学生に機会をもってもらうものと位置づけています。
受講生にひとりも京都出身の学生がおらず、地域の情報がわからない状況から始まった年もありました。通りの名称や距離感も分からないので、地域の課題を発見する以前の状態です。そうした場合は、例えば「防災」であれば、まずハザードマップと地形図を渡し、危なそうなところを見つけてくるフィールドワークをします。すると私でも気づかなかった危ない箇所が見つかるんです。斜めになった電柱や、工場の壁に立てかけられた資材が「地震がきたら倒れますよ」など。地域の見方が変わり、「この店が流行っていないのはなぜか」という話が出たりもしました。だから継続性はなく毎回ゼロからのスタートですが、意義はとてもあるかと思います。

――課題はどのように設定されるのですか。

「今年は防災をやるぞ」「YouTubeを使って動画を作ろう」というように、毎年大枠は決めます。子ども食堂の動画を作成した年は、受講生に子ども食堂を運営するサークルを立ち上げた学生がおり、その学生の提起で取材が決まりました。「こんな授業があるなんて知りませんでした」と4回生で初めて受講した学生です。学生間で問題意識を共有し、はじめは子ども食堂がある地域の歴史に焦点をあてようと、日本史を学ぶ学生が調査したりもしていましたが、最終的には学生ボランティアを増やしたい、学生の背中を押す動画にしたいということになりました。そこに至るまでのディスカッションでは非常に濃い話し合いができていたと思います。
そうした学生の試行錯誤を導く工夫としては、ずっとやっていることですが、学生の中に「監督」を決めさせ、判断に迷う時は教員ではなく監督が判断するようにしています。皆を引っ張るリーダーではなく、共同作業の中で最終判断をする係の監督です。動画に使う音楽なども、最終的には監督の判断で方針が決まったりします。協働で活動する方法を考えることも主体的に学んでほしいと思っています。

――継続性がある地域連携活動の事例はありますか。

他の教員の授業ですが、例えば教職課程の授業での取組があります。滋賀県の葛川という地域では、昼間は地域の外に働きに出る人が多く、放課後は子どもだけになってしまいます。普段は学校が開放されますが、夏休みや冬休みは子どもの居場所がなくなるという問題がありました。そこで、「学生ディベロップメントゼミ」というゼミでは、長期休み期間中に教職課程の学生が子どもに関わる活動を継続的に続けており、卒業生もボランティアとして戻ってきたりしているようです。
この活動は、教職課程という専門知識を学ぶ学生たちの活動ですが、地域連携というと社会科学系の学部・学科が中心というイメージがあるかもしれません。しかし、一見あまり役に立ちそうにない、文学部で学ぶ歴史や文化の知見で地域課題を解決することもあると思っています。これまでいろいろな地域の方々と交流してきましたが、意外と地域の歴史を知らなかったりします。もちろん、有名な史跡があったり偉人がいたりすると、それに関することはよく知っている人がおられるんですが、たとえば「あそこのトンネルがいつできたんですか?」といった質問だと、誰も答えられなかったりします。地域の発展や課題解決を考える際、大河ドラマに出てくるような歴史だけが大切かというとそうではなく、例えば開発や災害で街全体が大きく変わってしまうことで、10年前、20年前の過去すら思い出せなくなってしまいます。そうすると、今ある地域の問題もわかりにくくなってしまう。そう考えると、文学部で学ぶスキルでも地域にかなり貢献できるのではと思います。

対話をして考えることの大切さ ――地域連携活動で大切にされていることを教えてください。

教育プログラムであるからには、地域の方々に、単なるボランティアではないことを理解していただくよう気を付けています。また、最近の学生は昔と違って忙しいので、学生の事情を理解し、受け入れていただくようにお願いしています。学生も、地域に入って活動したり、地域の方々と交流したりすると、満足感や達成感を味わいますが、それで終わるのではなく、問題点を見つけ、学びにつなげなければいけません。
「地域課題の解決」とか「地域の活性化」などと言うのは簡単ですが、そもそも何をもって地域課題の「解決」とするのか、何をもって「活性化」というのか……など、その内容は一概に定義できるものではありません。たとえば、商店街の通行者数の増加を「活性化」の基準とすると、イベントを開催することで交通量を増やすことはできますし、それによって達成感も味わえるでしょう。でも、そのせいで、イベントをしなければ人が来なくなってしまう場合もあり、結局は商店街が没落してしまうこともありえます。「活性化」とは?「課題解決」とは?といったことをしっかり考えることができる、というのが、学生が地域連携活動で学ぶ一番の大切なことかもしれません。
大切なのは、「なぜだろう」「自分は何をしたいんだろう」と考えること、そして対話をすること。地域の方々という、学生とは立場が違う人の話を聞き、相手の言葉に基づいて自分で考えなければいけません。
大学で地域連携活動を経験した学生が、やがて大人になり、どこかの地域で町内会活動をして同じような場面に直面した時に、「そういえばこういうことがあった」「活性化とは何かについて議論した」と授業での経験を思い出してくれたら、と思っています。それでその地域が少しでもよくなるかもしれませんし、近くの大学で地域連携活動やボランティアをやっている学生がいれば、そこと連携しようと思ってくれるかもしれません。そうなったら嬉しいですね。

<おわり>