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Special Contents02

ソーシャルイノベーターに聞く!
リレーインタビュー企画

第1回 京都橘大学 阪本 崇 副学長

Special Interview

京都から発信する政策研究交流大会 審査員の先生方によるリレーインタビュー企画がスタート!
政策研究交流大会についてのエピソードや、「都市政策」を通じて社会貢献を考える上でのヒントなど、大学の枠を超えてソーシャルイノベーターがお届けします。

◆阪本 崇 教授
京都橘大学 副学長 現代ビジネス学部 経営学科
<専門分野>
財政学、文化経済学、公共政策、教育経済学

Q1. 阪本先生から見た京都の課題について、ご専門の観点からどのように考えておられますか。

京都における課題、気になっている点と言えば「オーバーツーリズムによる観光地への負荷」です。たくさん人が来て色々な所を訪れるとなると、公共施設や公共サービスも充実させていかないといけません。 私は財政学の「経費論」を専門としていますので、特に公共政策においてのお金の配分の仕方などの観点から、どのように整備して観光客と住民がうまく共存できる仕組みが作れるのかという点に注目しています。

Q2. 実際に地域課題の解決に向けて研究・活動をされていることがあれば教えてください。

2016、2017、2018年度に、京都市の「事務事業評価サポーター制度」に関わっていました。「事務事業評価」とは、行政が実施する事業の必要性や効果、効率性等を評価することによって、行政資源の有効配分や経営努力の目標設定など具体的な改善、見直し等を行うための判断に資する情報を提供することなどを目的に実施されるものです。 このサポーター制度は、大学のゼミ等と市職員が協働し、「事務事業評価」の結果に基づいて、各事業の制度改善への提案や各職場での取組を支援するものです。ゼミの学生と共に、たくさんある事務事業のうち評価表の表現や活動内容の善し悪しになどついて、実際に仕事をしている職員に話を聞きながら取り組みました。行政って「こんなことまで」やっているのか、と驚くような細かい仕事の内容がよく分かったので、学生にとっていい勉強になりましたね。

Q3. 学生が大学で学んだことを、 社会問題の改善、貢献など、どのように将来に繋げていくことを期待しておられますか

政策を提言しようとした時に、どうすれば行政や市民に納得してもらえるのかというところを学んでもらえたらと思います。社会貢献や取組の改善について、一人一人にできることはたくさんありますが、説得力を持って説明することは難しいですね。そこを大学でしっかり学んで課題や提案をしっかり「説明できる人材」になってほしいですね。 実際に学んだこと、そのプロセスを将来に繋げているという点では、事務事業評価サポーター制度に参加したゼミ生で、公務員になった卒業生がいました。面接試験でその経験が役に立ったそうです。もともと公務員志望でしたが、京都市の活動を見て、行政で働くという志望度はより高くなったのではないでしょうか。

それぞれ学部によって違うと思いますが、例えば法学部の場合、法律の知識を活かして法律家になって社会や地域に貢献することができます。しかし、経営学部、政策学部などは、そこで学んだことが直ぐに地域貢献に結び付くとは限らない。政策研究交流大会に出場する学生は、調査し、論文を書き、発表に向けたプロセスの中で、リーダシップを発揮したり、調査力、論理的に物事を考える力が身に付いてくるので、将来、地域組織のリーダーなどになってくれたらと思います。 学生時代と違い、仕事を始めると自分の時間を取ることは少し難しくなります。これからは働き方改革だけでなく、労働時間の制限もありますから、キャリアを複数持つということも、おそらく当たり前になってくるでしょう。その中で地域の自治会の役員を引き受けるなど、大学で培った課題解決能力、文章作成の能力、サークル活動で身に付けたことなど、働きながらでも、大学時代に身に着けた知識や経験を活かせることがあると思います。専門的なことだけではなく、自分にできること、興味のあること、身の回りのことから始めるのもよいでしょう。 難しく「貢献しよう」と思う前に、まずは身近な地域のことを知る、体験してみること。その中で見つけた課題に対しては、明確な根拠を持って取り組むことが大切です。

Q4. 京都から発信する政策研究交流大会について、指導学生の大会出場のエピソードがありましたら教えてください。

エピソードと言えば、第14回の政策研究交流大会に出場するグループの中で、1人だけ出場を嫌がった学生がいました。「グループワークが面倒だから」と言うんですね。普段も自分から発言するタイプではありませんでしたが、役割分担で発表担当になってしまった。本番は心配しましたが何とかやり遂げてくれたようでした。その学生が、今年、一番たくさん内定を取ってきたんです。大会出場の経験が学生の中で大きな糧になったような気がします。 苦労したことは、やはり文章やパワーポイントの作成が大変だったことですね。調べて分かるところまではできるんですが、それを発表に持っていくのが難しい。とにかく時間がかかるので、ゼミ以外の時間も本人たちだけで練習したり、研究室に呼んで作成をさせたりしました。 最初は、学生同士で役割分担を決めていたようですが、作業していく中で1つ良いものが出来てくると、それに引っ張っていかれるところはありました。ブレイクスルーではないですが、たまたまでも、ちゃんとした資料を見つけた、ポイントをとらえた、作った資料が見やすかったなど、コツをつかむような過程はあったと思います。

Q5. 学生にとっての効果、成果、など、これからの大会に期待することを教えてください。

例えば、大学間が地理的に離れていて、他大学と研究や勉強で交流する機会が少ないことがありますが、この大会を通じて、他大学の学生がどんな研究調査や活動をしているのか知ること、相対化をすることはとても大事です。他大学の発表に触れて刺激になったり、自信になったりする良い機会だと思います。 もう一つは、政策研究交流大会に参加する学部の多くは資格を取るための学部ではないので、目標を作りにくい中、大会を一つの目標として活動できることです。大会運営に参加できる学生実行委員もすごく勉強になる。ぜひ実行委員に参加してみることもお薦めします。 期待という意味では、政策学部系以外の違う分野からも応募してきて欲しいですね。様々な学部からの政策の発表を聞くことができれば、より大会も面白くなるんじゃないでしょうか。 成果としては、政策提言のフィードバックがもらえれば学生の励みになりますから、ぜひ行政職員の方々にも来ていただいて、学生と意見交換し、学生ならではの斬新なテーマを政策に生かしていただければと思います。

<おわり>

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