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Special Contents05

ソーシャルイノベーターに聞く!
リレーインタビュー企画

第3回 佛教大学 大束 貢生 准教授

Special Interview

京都から発信する政策研究交流大会 審査員の先生方によるリレーインタビュー企画がスタート!
政策研究交流大会についてのエピソードや、「都市政策」を通じて社会貢献を考える上でのヒントなど、大学の枠を超えてソーシャルイノベーターがお届けします。

◆大束 貢生 准教授
佛教大学 社会学部 現代社会学科
<専門分野>
ジェンダー論、マイノリティ論、ボランティア論

Q1. 大束先生から見た京都の課題について、ご専門の観点からどのように考えておられますか。

 私の専門はジェンダー論で、特に「男性問題」について研究しています。
男性問題とは、社会の中で女性というだけで女らしさを求められてしまうように、男らしさも求められてしまうことです。例えば、女性は、結婚、出産、子育てをするのが当たり前、男性は働いて妻子を養うのが当たり前という価値観が存在するために、非正規雇用や低所得の男性が結婚を諦めてしまったり、定年後の男性が、地域とのつながりがもてずに孤立してしまったりといった問題があげられます。女性が活躍するためには、男性の問題も一緒に解決していく必要があります。
 しかしながら、男らしさを求められることに対して異議申し立てをしようとする男性は、まだ少ないですね。今の社会は男性というだけで優遇され、下駄を履かせてもらっているので、男性と女性は平等とは言えない。男性があえて「自分は生きづらいんだ」「こんな下駄なんか要らない」と声を上げるのはすごく勇気がいる。特に対男性からしたら「お前は男なのになぜそんなこというんだ」となる。どれだけ下駄を履いているのか男性が自覚する事と、その状況を「男性運動」の中で言い続ける事が重要なのではと思っています。それでも個人の努力では限界があるので、政策形成という角度から見て変えていかないと難しいのが現状ですね。
 私は研究の一環で毎年スウェーデンに行っているのですが、スウェーデンでは福祉政策の1つの特徴として、ソーシャルワーカーを介在させた支援制度が確立されています。そこでも顕著なのが「ジェンダーソーシャルワーク」の視点が政策に取り込まれていることです。「男らしさ」「女らしさ」といった性差別が存在する環境で発生する、それぞれの性差に固有の社会問題に対応した支援を「ジェンダーソーシャルワーク」と言いますが、日本でもそのような視点でそれぞれの支援制度を考えていくことが必要だと感じています。日本の福祉政策においては、支援対象がまずは子どもや女性、高齢者が優先されがちなので、男性問題に関する認識を広め、男性への支援をどのように充実させるかが課題だと感じています。
 「元気な女性たちのまちづくり」など、ジェンダー政策とまちづくり政策をどのようにつなげるか。そういうところで京都発信で政策評価するものができてもいいのではないかと思います。まずはジェンダー平等な社会を作っていくと、働き方をはじめ、社会のしくみも変わっていかざるを得ないと思います。そのためにも、あらゆる政策にジェンダーの視点を持つ必要があるでしょう。

Q2. 学生が学んだことを社会問題の改善、貢献など、どのように将来につなげていくことを期待しておられますか。

 私のゼミは比較的教員志望の学生が多く、特に教員志望の学生にはマイノリティの視点を持ってほしいという想いがあります。例えば、高齢者や障がい者といった社会的弱者がどんな生活をしているかという事を知ると同時に、課題解決のためにどのようにアプローチすればいいのかを考えるゼミなので、それを知った上で教師になって欲しいですね。色んな生徒がいる、色んなご家庭がある中でどのように対応していけばいいのか、ゼミでの経験があれば実現可能な方策を考える力が備わっていくと思っています。
 また、今年初めての試みとして上京区と北区のまちづくり支援金というものに応募して採択されたのですが、その支援金をもって、ゼミで児童館、女性に関わる問題、若者支援などの活動することになりました。「女性とまちづくり」をテーマにしているグループがあるのですが、まちづくりのためには多様な人々の声を聞くことが必要になります。しかし一般的にはまちづくりには現場で働く男性の声が反映されることが多く、地域の女性を対象に女子会を開いて、女性たちの声を集めようというアイデアが出ました。学生によると、お母さん方を中心に集まりを持ってもらえる方向で話が進んでいるようです。また、高齢女性が多く住んでおられるのですが、ほとんど家から出ない傾向にあるという問題があるので、そういう人たちの声も集められたらと思っています。
 ここで取り組んだ問題や活動した結果を、提案としてどのように実現するのか、自分の将来設計と結びつけて考えてもらえたらいいですね。

Q3. 京都から発信する政策研究交流大会について、指導学生の大会出場のエピソードがありましたら教えてください。

 毎年苦労していることは、論文作成から発表までのスケジュールです。完全にテーマ設定から学生に任せているので、4月、5月、長ければ6月までテーマについてグルグル悩んでいる。悩んでいる間も対象地へヒアリングに行くので余計に訳が分からなくなったりすることも。政策研究交流大会の論文提出後から発表までの1か月間に現地の方と意見交換する、改善できる部分があれば改善する、提案を実現できるなら実現させる、それを反映させてパワーポイントを作る、というスケジュールで後期はかなり忙しいですね。

 提案については毎年ユニークなものがあります。例えば女性活躍推進グループでは、女性管理職の割合が少ないという問題に対して、ロールモデルがないからであり、インターンシップの中で、学生が管理職の立場で学べるような実習をやればいいのではないかという提案が出ました。男性の方は、出世の仕組みがある程度分かるような社会になっていますが、女性にとっては結婚、出産、育児などでキャリアが分断される可能性が高く、どうやったら管理職になれるのか、それともなれないのか、入社してみないと分からないことが多い。実際に行政の管理職の方に、将来の幹部候補となる女性人材育成のため、管理職とはどういう仕事なのかを体験するというインターンシップが考えられるのではないかと提案しました。インターンシップではまず管理職を経験することはできないと思うので、面白い発想でしたね。

Q4. これから大会に期待することを教えてください。

 学生の立場では、自分たちが考えたことが大学以外の方に評価されるという事は、あまりないので、非常にいい機会なんじゃないかと思います。大学の中だと、得てして「解決策がありますよ」という発表だけで終わってしまう。外部の方に質問されることによって、「現地の方はどう思ったのか?」「実際にそれは本当に実現可能なのか?」といった部分についても考えて発表しなければいけないので、教育的な効果が非常に高いのではないでしょうか。
 行政もですが、企業の方にも来ていただけると学生の考えを知るいい機会になると思います。学生の提案で少しでも引っかかるものがあれば、学生と企業が一緒にやりましょうというチャンスが生まれるかも知れない。京都の元気な中小企業の方やベンチャー企業の方などに来ていただけるなら、学生にも実現不可能な案ではなく、事業ベースにのるような提案を考えるきっかけになります。行政や企業を含め、多くの方に発表を聴講していただく中で、凸凹あってもいいからキラリと光るものがあればと期待しています。

<おわり>

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