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Special Contents04

大学と社会
―地域連携の意味と大学の役割―

龍谷大学政策学部 深尾 昌峰 教授

Special Report

2019年7月13日、大学コンソーシアム京都が主催する大学職員向けの研修事業「SDゼミナール」において、龍谷大学政策学部の深尾昌峰教授を講師にお迎えし、大学と地域連携をテーマとした授業が行われました。人口減少、超高齢化など、社会構造が大きく変化する中で、大学に求められる役割とは何なのか。GAKUMACHI STATIONでご紹介します。

◆深尾昌峰氏プロフィール
龍谷大学政策学部教授、龍谷大学エクステンションセンター長(REC)、(公財)大学コンソーシアム京都 調査・広報事業部長
持続可能な地域社会構築のため、市民性をベースとした組織をめぐる課題やその克服に向けた政策形成といった「非営利組織マネジメント」に関する研究のほか、「ローカルファイナンス」の観点から、金融機関との連携で地域に社会的投資を行う研究などにも取り組んでいる。
大学在学中の1998年に特定非営利活動法人きょうとNPOセンターを立ち上げ、事務局長に就任。2001年には日本で初めてのNPO法人放送局京都コミュニティ放送を設立、事務局長を兼務。2012年、株式会社PLUS SOCIALを起業し、代表取締役に就任。非営利型株式会社として注目を集める。2016年、研究成果をもとにプラスソーシャルインベストメント株式会社を起業し、代表取締役会長に就任。

これからの社会 ~地域を取り巻く構造の変化~

 大学が社会における役割を意識するきっかけは、2005年の中等教育審議会「我が国の高等教育の将来像」の議論が発端となり、教育・研究自体も長期的観点では「社会貢献」ではありますが、より直接的な貢献の役割が明確に意識されるようになってきました。それまでも、多くの大学で市民向け講座が実施されてきましたが、それだけが社会に対する「研究の還元」と言えるのかという、大学そのものの意義に対する問いかけでもあったわけです。
 人口構造で言えば、2005年を起点とすると、2020年には、14歳までの子ども世代は25%減少し、75歳以上の後期高齢者は1.6倍に増加します。ベットタウンなどの郊外では後期高齢者は2倍を超え、高齢化が急激に進んでいきます。高齢化に伴い、社会保障のためのコストについても税収を大幅に上回る状況が続いています。加えて、日本は人口が減少し始める社会を初めて経験することになります。2060年には高齢化率は40%に迫り、社会保障の構造はトーテムポール型の社会に変化することが予測されています。
 このような社会構造の中、私たちはどのように生きていけばよいのでしょうか。「社会が目指したい未来」を大学がどう考えるのかを、大学人である我々は考えていかなければなりません。
 また、パリ協定後、多くの国で二酸化炭素排出量の大幅な減少を目標としていますが、これは石油など化石燃料からの撤退を意味しています。それは同時に、社会の秩序や我々の生活スタイルも大きく変化することを意味しています。既に、世界では大きな動きがあります。例えば、ダイベストメント(機関投資家等の投資引き上げ)です。世界的大手企業であっても、化石燃料等に頼る企業からは投資が撤退し始めています。では、そのお金はどこへ行くのか。環境や社会に配慮する企業です。こうした視点での投資を「ESG投資」(財務状況のみでない環境・社会・ガバナンスの観点からの投資)と言いますが、評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性などに優れた企業特性を持っていると言えます。
 脱炭素型社会を目指し、経済成長よりも環境保全が重視される社会へと変わっていく中で、大学にとっても、同じものさしが当てはまるのではないでしょうか。

今までの「リーダー養成」の限界と大学の社会貢献のあり方

 大学の社会貢献の一つに「人材育成」があると思いますが、いったいどんな人材のことでしょうか。これまで、地域や組織の「リーダー」と言えば、「強さ」「代表性」「閉鎖性」がイメージされますが、昨今ではみんなの意見をひきだせる「しなやかさ」を持ち、「オープン」で「合意」を重視するフォロワー型のリーダーが必要とされています。前例踏襲主義から脱却し、かつ、自分の経験値だけで判断するのでもない、潜在的資源をつなぎ、引き出すリーダーが求められているのです。
 では、大学の存在意義とは何かについてですが、大学は従来の「社会貢献」を発展させて価値創造を大学経営の軸に位置付けることが重要です。大学の社会的責任と言えば、「情報公開」「コンプライアンス」など、リスクにどう対応するかという視点、贖罪的側面がクローズアップされてきましたが、これからは、大学は社会変革の「要」として捉えられていることを認識する必要があります。
 しかしながら、社会・地域への貢献や連携と、大学の教学、経営は統合されている状況にはありません。ゼミ単位や個々の取組に留まっており、戦略的に捉える発想そのものに欠けている大学が多いのが現状です。若者の意見があれば世の中が変わる、地域が元気になる、というのは幻想であり、そのような形態の連携では大学も地域もいずれ疲弊してしまいます。

これまでの「社会貢献」とこれからの「社会貢献」 ~CSRとCSVを参考に~

 企業は、販売する製品やサービスを通じて、みんなが目指したい、実現したいと思える価値を創造する方向にシフトしています。これがCSV(共通価値の創造)と呼ばれるものですが、こうした活動が結果として製品やサービスの質を向上させ、企業のブランド力を高め、価格も低く抑えられるという好循環を生み出すことにつながっていきます。

大学の資源を「社会」とどうつなぐのか

 これは大学にとっても同じことが言えます。私たちが、そうありたいと願う社会にするために、大学に何ができるのかを考えてみましょう。SDGsが共通価値となってきた状況において、大学もそのような価値を重んじるスタンスがなければ選択されない時代になってきたことに危機感を持っている人も増えています。ICTの進化により、一方通行の講義であればキャンパスは不要という議論もありますし、AIの導入により最適解を出せる時代となれば、教職員個人の経験に頼る必要もなくなります。
 このような状況において、大学が、これまでの大学のままであり続けられる余地はなく、選択され、淘汰される状況に直面するでしょう。大学にとっては、SDGsを自らにも突きつけられている「刃」として捉え、どうやって自分たちの地域に実現していけるかを、教育的にも、研究的にも考えていくというプロセスを内包することが、一つの強みになる可能性があるのです。そこで大学の様々な資源を活用することが大切になってきます。

「競争」と「共栄」の共存 ~「大学のまち京都」での大学連携~

 大学単体で戦う時代は終わりだなということを痛切に感じています。規模の大小にかかわらず、各大学が特色を打ち出すことで生き残ることができるのです。しかしそこには、共通価値を創造することで、社会から必要とされるということが土台にないと厳しいでしょう。
 「大学のまち」である京都では、大学同士が連携し、この研修のようなSDや議論の場、ネットワークを作り出しています。大学コンソーシアム京都に関わってからは、「競争」と「共栄」が共存できるのだ、ということを実感しています。例えば、単科大学などにも、多様な特色・強みがあり、魅力あるコンテンツが多く存在する。多様な規模、特色を持つ大学同士が連携し、新たな価値創造型社会のフレームワークをつくることができるかが、「競争」と「共栄」の共存のための鍵になります。それには、自前主義から脱却し、お互いの不足を補い合いながらCSV的な発想を様々な政策に織り交ぜていくことが必要となるのです。

あとひとつの「貢献」 ~応援される存在としての「大学」~

 国公立大学においては、ファンドレーザーの専門職員が増えています。国の補助金に頼らずとも、様々なカウンターパートから集めた寄付金を財源にすれば、自由な教育研究を行い、真の自治を目指すことができます。大学が評価されるには、日々の社会とのコミュニケーションとマネジメントが重要です。アウトプット(結果)だけでなく、アウトカム(成果)を提示し、将来目指すものをきちんと伝えられるかどうかにかかっています。
 こうした中で、職員が果たす役割は「ある」ものを「つなぎ・ひきだし」、イノベーションを加速させることであり、本講座の受講生であるみなさんが大学・社会を「変える人(変人)」となって、大いに能力を発揮されることを期待しています。