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Special Contents01

コミュニティデザインと
住み良い都市空間

山崎 満広さん

Special Report

2018年12月2日に実施した「大学・地域連携サミット」の基調講演に、アメリカ・オレゴン州ポートランド市で市開発局国際事業開発オフィサーとして活躍された山崎 満広さんを講師としてお招きしました。 「クリエイティブで持続可能なまちづくり」の秘密に迫ります。

◆山崎満広氏プロフィール
1975年生まれ。南ミシシッピ大学学士・修士号取得(国際関係学、経済開発専攻)。
2012年よりポートランド市開発局国際事業開発オフィサーとして、ポートランド都市圏企業の輸出開発支援や投資・起業誘致を担当。2017年6月より独立起業し、コンサルタントとして日米を中心に多くのプロジェクトを手がける。 現在、つくば市まちづくりアドバイザー、ポートランド州立大学シニアフェロー等を兼任。 著書に『ポートランド-世界で一番住みたい街をつくる』(第7回不動産協会賞受賞)など。

ポートランドを取り巻く状況

 世界ではどんどん都市化が進んでおり、2007年には世界人口の半分以上が都市に住んでおり、都市部が大きくなればなるほど、こういう状況が続きます。日本ではインフラが整備されていますが、世界を見ると大きな都市は交通網に未整備な所も多く、かなり混んでいます。都市以外を見ると失業率も高く、生活がうまくいかないことがあるので、都市部に人口が集中しがちです。ただインフラを引いて都市を大きくすると、車で片道15分のところでも渋滞のため、膨大な時間をかけて通勤する人たちが出てきます。そうなると、本当に都市部にいる意味があるのでしょうか。もっと楽な生活があるのではないかと思いますよね。そういった中で、これからさらに人口が都市に移行していきます。60%、70%、75%という予測が立っています。これからの都市生活の循環、都市の生き方やあり方が、地球のあり方と直接関わってきますので、それをうまくマネージメント・管理し、地球環境を維持・存続させるために、我々はどうしたらいいのか。その突破口を見つけることのできたまちが、今、うまくいっているまちの事例だと思います。その内の1つがポートランドです。

山崎さんから見たポートランドの魅力とは

 ポートランドは、都市化が進んでいるといっても緑が多く、住み心地のいい環境があります。山も海も川も近いんです。森がたくさんあって、どこに住んでいても歩いて20分以内に公園があることが当たり前です。また、スポーツ産業も発達しています。有名なオレゴン大学があり、運動やアウトドア環境もそろっているので、スポーツ関連企業が新しいものをつくっては試す場があり、イノベーションにつながっています。「半導体世界一」と言われる研究所があるキャンパスも、ポートランドの市内から20分ぐらいのところにあります。この2つの産業に感化され、クリエイティブなまちと言われていますし、何かをつくり出す人・会社を始める人もたくさんいます。なぜかというと、ポートランドは小さいまちで大企業が少なく、自分たちで起業することが多くなるわけですが、そのことに対してすごく寛容な文化があります。さらに、市内に90カ所ぐらいビール工場がある、世界で一番ビール工場の多いまちでもあります。小規模な工場がたくさんあり、おいしいクラフトビールを作っています。
 いろいろな人がとにかくまちを使い倒して、楽しんでいます。自分たちの生活を楽しくするために非常にアクティブです。外に行ったり、酒を飲んだり、おしゃれをしたり、何をするにしても敷居が低いというか、誰でも参加できる雰囲気があるわけです。その訳をこれから紐解いていきます。

ポートランドの変革を紐解く

 実はポートランドはかつて公害がひどくて、あまりいいまちとは言えませんでした。工業汚水で汚染した全米一汚い川があり、環境省から罰金を取られていたぐらい、ひどい状況だったという過去があります。これがすごく重要です。なぜなら、これ以上、公害が進んだら産業の発展も人口増加率も低迷していく崖っぷちに立った経験があったからこそ、普段は対立している人たちが初めて手を組んで舵切りし、一緒に解決に向けて行動し始めました。全員が同じ方向を向いて取り組んだことがきっかけで、ポートランドはうまくいっている部分があります。それが土台ですね。
 60年代終わり、ダウンタウンはすごく賑わっていて、素敵な空間がたくさんありましたが、夕方ごろは閑散としていました。なぜかというと、当時は車中心のまちの設計をしてしまったからです。車に便宜を図って、どんどん道や駐車場をつくったことにより、まちの中心部がほとんど車で埋め尽くされていました。夕方、仕事を終え、みんなが帰ると、がらんとなってしまうんです。まずはそれを変えて賑わいを出そうと、グランドデザインをつくりました。グランドデザイン案の骨子をつくって、それに則った戦略をつくり、実行し始めたのが70年代から80年代のことです。またそのころ掲げた「緑地と商業地と就労地と住宅地をみんなひっくるめて一緒につくろう」「ミクスドユース(mixed-use)のまちにしましょう」という目標は今も残っています。1972年に作られた40年以上前のグランドデザインを基に、今もいろいろな計画をつくっているまちなんです。
 人間が壊した自然を治していこうというのを、まちの持続可能性と解釈されがちなのですが、そもそも我々が住んでいる場所は自然によって造られたものですから、本当は自然が中心ですよね。人間は自然の中で生かされている存在でしかないのです。だから、自然環境の持続可能性だけを考えてしまうと、究極的には人間がいない方がいいという事になります。しかし、実際、人間は世界中にいますし、日本のように人口が減っている国はまだ少数で、世界人口は増えていますから、現時点での最善策はいかにして人間が自然と共存できるかを都市で考えることなのです。
 ポートランドでは過去50年の経験から、うまく自分たちの言葉を伝えられるようになりました。コミュニケーションに気を遣っているわけです。昔はポートランドの自然のコンセプトとして6項目をあげていましたが、現在では一言で「エコディストリクト(EcoDistricts)」と表しています。行政主導、民間主導、市民主導、大学や大きな機関が主導で行う場合でも、一番重要なのは、計画を立て始めて実行に移すときに、みんなが連携を取ることです。「エコディストリクト」を簡単に言うと、「健康で自立的で持続可能な地区」です。聞こえはいいけれども、一体何のことだろうと思いますよね。つかみどころがない言葉ばかりです。これをコミュニティ、住人たち、そこを一番使う人々の意見を取り入れて、官と民と協働でつくるところにミソがあります。

住みよいまちづくりの秘けつ

 次に、まちを地区レベルで考えます。なぜかというと、地区レベルは人々が一番集まりやすい単位だからです。これをまち全体で一遍に考えようとすると、いっぱい地区が置かれて、競争する意見が出てきます。顔見知りの仲、あいさつができる仲というと、頑張っても100人とか200人程度なんです。それ以上になると知らない人ばかりで、建設的な議論が進まない原因になります。よく100人で1まとまりと考えているんですけれども、ポートランドでは100人単位ぐらいでまちづくりをやっています。

 昔、よく言っていた6項目は、Continuity(連続性)、Connectivity(連結性)、Character(地域の特徴)、Community(コミュニティ)、Comfort(居心地の良さ)、Culture(文化)です。いわゆる6つの“C”です。都市デザインの時代には、本当は4つのCだったのですが、僕が6つにしました。なぜかというと、最後の2つのCが重要になってきたからです。取組を始めるときには、ものごとの連続性と連結性が大切になってきます。例えば、一地区の中に中心地があり買い物もできる、働く場所も遊ぶ場所もあり、住宅地がぽつぽつあって、そこにまたミニ中心地みたいなものがある。それらを公共交通でつなげる形にすると、連続性と連結性が生まれます。そこから今度は地域の特徴、キャラクターが生まれます。まちをつくるときに、そういったことをうまくプランに取り入れていかないといけないと思います。

 

 連続性と連結性、特性があると、「この地域にはこれがある」「私はここが慣れ親しんだ地域である」となり、コミュニティが生まれやすくなります。それがまちをつくる上で重要です。コミュニティが生まれて、お互いさまの関係ができると居心地が良くなり、住みやすくなります。そして人が集まります。地域の特徴に合わせた住みやすさというのが、その地域の文化につながります。

 各地区が20分ぐらいのところに何でもそろっているコミュニティや働く場所があったりすると、そこだけで生活のほとんどが完結します。また移動を車ではなくて公共交通や自転車、歩きでできるようになると、もっと住み心地が良くなり、親近感を持つようになります。そういった観点から拠点と拠点を公共交通機関で結びます。周遊しているチンチン電車で移動ができるようなことも考えてうまくネットワークを図っています。こうやって各拠点の住み心地を上げて、コミュニティをつないでいきます。
 ポートランドの街区は特徴的で、1ブロックが60m×60mと、アメリカの都市の中では一番小さい街区なんです。これが重要です。もともと「オールとタウン」と呼ばれるポートランドのまちの発祥の地域が延びていくごとに、60m×60mの街区を作っていった結果、アメリカの小都市では珍しく人口密度が増えていきました。これは京都でもできますよね。ポートランドは64万人の都市ですが、普段から賑わいを出しています。ポートランド全体をダウンタウンの延長にしていこうと努力しながら、小街区をつくり続けた結果、中心地の面積の38%から40%が道空間になるんです。角地が多いから道が増えます。そうすると今度は道づくりや空間デザインに力を入れます。公園を潤沢につくるだけの土地がないので、憩いの場を道路上につくることになります。ただ単に歩道や車道があるのではなく、建物と歩道と車道の空間の用途をどんどん増やし、いろいろなパターンをつくります。その代わり、地区ごとに連続性と連結性を持たせる努力はします。まちづくりに貢献する道をつくるわけです。

 またポートランドには、古いれんがの建物がいっぱいあります。ここを整備するときには、必ずまちの助成金が出て、路面に窓を入れてもらうようになっています。歩いていると窓から建物の中が見え、建物の中に座っていると外が見えるという状態に人々は安心します。
 最新の事例になると、わざわざ大きな街区の中に目抜き通りをつくり、公園の空間を入れたり、自分たちが持っている施設で雨水と汚水をリサイクルし、上下水管にほとんど水を通さないといった街区まで出てきています。そこまで持続可能な思想は進んでいます。

生まれかわったポートランドの街

 こういったことを50年ぐらい続けると、まちが奇麗になっていきます。理想のライフスタイルを求めて、今では年間平均で週に400人ぐらいがポートランドに引っ越してきています。その中でも一番多い人口の分布は24歳から35歳の能力ある若者です。経済がうまくいって人口が増えていても、二酸化炭素の排出量を減らすというのが目標の1つです。交通と建物とリサイクル、いろいろなことを大々的にプログラム化して、条例化してやっています。
 何が重要なのかというと、見えないところに資金と気を遣っているということです。例えば、まちが木だとすると、人々が一番努力をしているのは土の状態をよくする事と根っこを元気にする事で、目に見えている木の幹や枝、葉っぱの部分は建物やインフラにあたる部分で、それらはあくまでもその努力の結果できたものということが、ポートランドの秘密ではないかと思っています。コミュニティが求めるもの、例えば便利とか、居心地がいいとか、賑わいがあるとか、いろいろな意見を集めて、いいものをうまく煮詰めていったものをアーバンデザイナーがデザインし、具現化しています。ポートランドではこれがうまくいっているというのも現状です。コミュニティの要望を土台にまちをつくるのが大事なことです。
 このポートランドの事例のどの部分が京都に当てはまり、どういった連携が京都のまちに必要かを考えるのが、これからのディスカッションのトピックになるかなと思います。ただ事例を真似するのではなく、自分なりにアレンジして、各地域にはどんな方々がいるか、どういう制度があって、または現状のどういう制度を変えなければいけないかを考えるきっかけにしていただければと思います。

<おわり>

★京都学生広報部のスタッフが山崎満広さんに行ったインタビュー記事はこちら↓